会長挨拶

第46回日本脳神経外科コングレス総会 会長挨拶

木下 学

第46回日本脳神経外科コングレス総会

会長 木下 学

旭川医科大学 脳神経外科学講座 教授

第46回日本脳神経外科コングレス総会を2026年5月14日(木)~17日(日)までの4日間、国立京都国際会館にて開催いたします。本コングレスは、「脳神経外科医の生涯教育と科学的研究による脳神経外科学の進歩を通して国民の健康・福祉に貢献すること」を目的として1980年に創設されました。ルネサンスの巨匠ミケランジェロが晩年に語ったとされるAncora imparo(私はまだ学ぶ)が学会の紋章に掲げられているように、私たちは常に生涯学習の精神を大切に歩んでまいりました。本コングレスが日本の脳神経外科学の発展に大きく寄与してきたのは、歴代会長をはじめ会員の皆様のたゆまぬ努力の賜物であり、ここに深く敬意を表します。

さて、科学の進歩はしばしば非連続的です。近年の人工知能技術の急速な発展はまさにその象徴といえるでしょう。破壊的(disruptive)技術が登場すると、それを使いこなす者とそうでない者の間に新たな格差が生まれます。「昨日の常識は今日の非常識」となり、逆に「昨日の非常識が今日の常識」となるのです。科学の進歩が加速するほど、従来の叡智(wisdom)を俯瞰する余裕は失われ、専門領域の知識は細分化・分断化されていきます。脳神経外科学も例外ではなく、先人たちが長い年月をかけて築いてきた叡智の全体像を見渡すことが難しくなっています。このような状況だからこそ、広く分散した叡智を再整理し、「未来の脳神経外科」のあるべき姿を見定めたい。そんな思いを込め、本総会のテーマを「叡智の結晶が創る脳神経外科の未来― Crystalizing wisdom for the future of Neurosurgery」といたしました。学会ポスターには、冬が長く雪深い一方で、雪景色が格別に美しい旭川を象徴する“雪の結晶”をあしらい、「脳神経外科の未来が美しいものであってほしい」という願いを込めました。

本総会が未来を見通すには、若い感性が不可欠です。プレナリーセッションでは、本邦の脳神経外科学を牽引する次世代リーダーの先生方にご登壇いただき、若い視点からこれまでの「叡智」を俯瞰し、未来への展望を語っていただきます。また今回の総会では、「基礎医学」「外科手術」「医療技術開発」「脳神経外科診療の近々の課題」などのテーマで特別企画を予定しています。特に外科手術に関する企画では、「手術手技に卓越した脳神経外科医の聖域とされてきた『顕微鏡手術』は、将来的にロボットに代替される可能性はあるのか」という根源的な問いを掲げます。この問いを探るべく、顕微鏡手術ロボット開発の専門家である愛知医科大学解剖学講座教授 内藤宗和先生にご講演いただきます。続いて、開腹手術から腹腔鏡手術、さらにはロボット手術へと大きく進化した消化器外科領域の歩みについて、藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学講座教授 宇山一朗先生にご紹介いただきます。脳神経外科とは異なる領域であっても、新しい技術を積極的に取り入れ、既存技術のあり方を根本から変革してきた経験は、多くの示唆を与えてくれるはずです。

国際交流の面では、長年深い関係にある米国脳神経外科コングレス(Congress of Neurological Surgeons:CNS)より、2026年理事長のMartina Stippler先生を海外特別講演にお招きします。Stippler先生は神経外傷分野を専門とされる高名な女性脳神経外科医です。また、海外招待演者としてPeter Nakaji先生をお招きし、ご自身が自宅のガレージで着想し、社会実装まで実現した留置型131Cs小線源療法剤開発の経緯をご紹介いただきます。Nakaji先生は2022~2024年にCNS国際関係委員会委員長を務められ、日本脳神経外科コングレスと米国CNSの架け橋として多大な貢献をされました。

文化講演には経営学者・楠木建先生をお招きし、著書『ストーリーとしての競争戦略』を軸に、企業価値とは何か、ひいては社会に価値を提供するとはいかなることかについてご講演いただきます。企業は顧客・従業員・株主など多くのステークホルダーの調整で成り立つ一方、社会に必要とされる固有の価値を生み出さなければ存在意義を失います。厳しい環境で競争し勝ち残ってきた組織のあり方から、私たち脳神経外科医も多くを学べるものと期待しております。

学術総会は、会員の皆様が一堂に会し、セッション内外で議論を深められる貴重な場です。本総会では現地参加を重視し、皆様との対話を大切にした運営を予定しております。また、本会の趣旨にご賛同いただきました多くの協賛・共催企業のご支援のもと、ハンズオンコース、モーニングセミナー、ランチョンセミナーも充実した内容を予定しております。参加者の皆様には、自らの専門領域を一歩越え、多角的な視点から脳神経外科の未来像をともに議論する機会としていただければ幸いです。

本邦の脳神経外科学ならびに脳神経外科診療の発展にとって重要な本会を担当させていただくことは、旭川医科大学脳神経外科学講座員および同門にとりまして誠に光栄なことと存じます。京都での開催ではありますが、日本最北の中核市・旭川の魅力も発信しつつ、学術的に充実した総会となるよう、教室員一丸となって運営にあたる所存です。

2026年初夏、京都で皆様にお会いできますことを心より楽しみにしております。どうぞ奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。

第40回日本微小脳神経外科解剖研究会 会長挨拶

戸田 正博

第40回日本微小脳神経外科解剖研究会

会長 戸田 正博

慶應義塾大学医学部 脳神経外科 教授

第40回日本微小脳神経外科解剖研究会を主催させていただきます慶應義塾大学医学部脳神経外科の戸田正博です。長年にわたり、脳神経外科手術における微小解剖研究の発展と若手脳神経外科医の教育に寄与してきた本研究会は第40回という節目を迎えることとなりました。このたび、第46回日本脳神経外科コングレス総会における合同セッションを担当させていただく機会を賜りましたことを、大変光栄に存じます。

本合同セッションのテーマは「技術と知の融合」といたしました。脳神経外科における技術革新は目覚ましいものがあり、手術の低侵襲化や適応拡大に大きく貢献しています。一方、いかに技術が高度化しても、安全かつ再現性の高い手術を実行するためには、確かな解剖学的理解、論理的思考、そして臨床経験に裏打ちされた“知”の蓄積が不可欠です。技術と知が、相互に磨かれ融合することで初めて真の進歩が生まれると思います。

本セッションでは、「大脳白質線維束解剖」「血管内手術の脳血管解剖」「経鼻内視鏡手術の外科解剖」「側頭骨の外科解剖」「後頭蓋窩の外科解剖」という日常臨床に直結する重要な領域を取り上げ、各分野のエキスパートの先生方に、手術手技とその基盤となる微小解剖についてご講演いただきます。明日の手術に活かすために、さらに次世代の脳神経外科医の育成につながる貴重な機会となることを期待しております。

日本脳神経外科コングレスの会員の皆様にとって有意義なものとなるように準備いたします。ぜひ多くのご参加を心よりお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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